シワは、一度深く刻まれてしまうと、完全に消し去るのは非常に困難です。だからこそ、美容医療の最先端の考え方は、「できてしまったシワを治療する」ことから、「そもそもシワを深くさせない、定着させない」という「予防」のステージへとシフトしています。まだ目立ったシワがない20代後半から30代のうちに始める予防的な美容医療は、将来の自分への最高の投資と言えるでしょう。予防美容医療の主役となるのが、ボツリヌス注射です。特に、眉間や額、目尻といった表情ジワは、日々の無意識の癖の積み重ねによって作られます。まだ肌に弾力があるうちは、表情を戻せばシワは消えますが、年齢と共にその「折り目」が記憶され、無表情の時でも残るようになってしまいます。この「記憶」が定着する前に、ボツリヌス注射を打つことが非常に有効です。ごく少量の薬剤を用いて、シワの原因となる筋肉の過剰な働きをマイルドに抑制します。これにより、強い力を入れても深いシワが寄らなくなり、将来的にシワが刻まれるのを効果的に防ぐことができます。これは、紙を何度も同じ場所で折り曲げると折り目がつく前に、そもそも強く折り曲げられないようにするようなものです。表情が全くなくなるほどの強い作用は必要なく、あくまで自然な表情を保ちながら、シワの原因となる動きだけを弱めるのが予防的ボツリヌス注射のポイントです。もう一つの重要な柱が、肌のハリと弾力を維持するための治療です。シワが定着しやすくなるのは、肌のコラーゲンやエラスチンが減少し、肌の弾力、つまり「復元力」が失われるためです。この復元力を高く保つために、定期的な「肌育注射」が推奨されます。リジュランやスネコスといった治療を、半年に一度、あるいは一年に一度といったペースで受けることで、肌の線維芽細胞は常に活性化された状態を保ち、質の良いコラーゲンを生成し続けます。これにより、肌の密度が高く、ハリのある状態が維持され、細かなシワがつきにくい肌環境を保つことができます。これは、将来のために良質な「美肌貯金」をしているようなものです。また、ハイフ(HIFU)や高周波(RF)治療を定期的に受けることも、たるみの進行を遅らせ、たるみジワの出現を予防する上で非常に効果的です。